雑感のコーナー・時々コラム2000年その1
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反省から学ぶこと00/10/12
シーズンが始まる前は、大きな自信と確かな期待があったのに、終わってみれば、それは大きな過信と小さな希望だったことに気が付いた。感謝の気持ちと同じだけの未熟さを感じざるを得ない。一年一作、精一杯やった筈なのに言葉で伝えられない屈折した感情が込み上げてくる。悔恨と徒労を繰り返さないために、来年に向けて気持ちを切換えて行く。また、新しい年が始まる。もう何も学ぶことはないと思いながら、今年も反省から多くのことを学んだ。この10年、振り返ってみるといつもそうだった気がする。だから、来年度も今年度以上の作柄になると思う。
根拠ある自信と経験が私を支えている。でも、今はホッと一息したい。とにかく今年は、終わった。

 

有機はダメダメ00/06/30
有機栽培
は、ネット上でもよく見かける言葉だが、国際的な取り決めで、安易にこの言葉を使うことが出来ないと言うことをご存知ですか。3年間化学肥料、化学農薬の使用をせず、隣接地と隔離されたところで栽培された農作物で、認証されたものだけに与えられる称号が「有機栽培」、「有機農作物」です。日本でも違反した場合の罰則規定が決められました。しかし、こだわりの栽培をしている産直農家の中には、平気で「有機栽培」を使って、騙そうとしているか、あるいは、この事実を知らずに使用している農家がいます。これは、違法です。この程度の見識しかないの農家に期待する消費者も消費者です。
有機
と言う言葉を根拠なしに使用している農家を信用してはいけません。
つまり、減農薬有機栽培とかの表現は違法です。有機を謳い文句にしているところは、ダメダメ。

 

こだわって減農薬栽培しているわけじゃない00/05/10
JAの支所長の送別会があった。季節柄出てくる話は、農薬の話題ばかり、ほとんど農薬中毒の集まりみたいだ。「心配で、心配で、病虫害を出さないために、どう予防するか、どの農薬が効果的か」と言うような内容だった。私とは、別世界の話でとてもついていけなった。別に、こだわって減農薬しているわけじゃないけど、もう少し、生態系とか、天敵とか自然にまかせて栽培しても良いと思う。農薬に依存しすぎて、不安が募るばかり、ましてや、減農薬などできるはずがないと思い込み、農薬に依存する体質になってしまっている。。これを私は、農薬中毒と呼んでいる。今日現在、農薬は、使用していない。これは、結果であり目標ではない。ただ必要なかっただけの事。

 

忙しくなる前に00/04/20
芽が出るまでにやりたかった作業のほとんどを終えた。降雨も順調にあり、良いスタートが切れそうだ。ブドウと接する時間が増えると作業中考える時間も増えてくる。ブドウに問いかけ、自分に問いかけ、答えを見つける訳でもなく、時間が過ぎて行く。緑の中で哲学的な思考をする事って、楽しいものだ。
一人で作業していると一日中誰とも話をしないこともある。つまらないことでくよくよしているのが馬鹿らしくなる。
アイデアが浮かんでは消え、消えては、また浮かぶ。FMから流れる音楽をBGMに一日が過ぎて行く。
そして、3ヶ月後には、収穫が始まる。(でも、本当に大事なのは、残り9ヶ月の方なのに。)ブドウ栽培者が、生育しているブドウと接するのはわずかの期間だ。その時間をじっくりと楽しみたい。

 

農業の大転換だぞ00/04/10
昨年から農業に関する法案が15も可決され、大転換期がやってきた。詳しい説明は省くが、農法を国が初めて指定したことになる。私が以前から取り組んできた地球環境に優しい、循環型の持続可能な農業を目指さざるを得なくなった。こうなる事が明白であったから取り組んで来たのだが、今の農業の置かれている立場を理解している人達が少なすぎる。慣行農業はやがて否定されることすら気が付いていない。農家収入は減り続け循環型でないとおそらく生き残れず自然淘汰されるだろう。天候不順による不作だけがこの流れに抵抗できるのだが、逆らうことは出来ない。条件が悪いときほど循環型農業の素晴らしさが理解されるはずだから。それと、国内産の有機農産物はほぼ駆逐されると付け加えておこう。私は、人よりたった10年進んでいるだけなんですよ。追いつくかな。

 

2487haの農地00/03/15
新聞によると山梨県内の全農地の一割に当たるこの面積が、遊休農地である。この中で条件の良い優良農地でさえ、約800haあるという。10年前なら、農業への新規参入や経営規模拡大の機運もなかったので絶望的な状況だった。農地の確保は依然厳しいが、かなり見通しが良くなってきたのも事実である。この10年間、農地が確保できなかった事で、逆に、規模拡大に対応する様々な技術を検証することができ、多くを学ぶ事ができたのだから結果的には、良かったと思う。もし、早急に規模拡大していたら、今頃、破産していたかもしれない。
でも、あの頃と今、どちらも「根拠なき自信」だけはあった気がする。

 

お天気まかせ00/02/21
農業に関わる人ほとんどすべての人が、農業は、お天気まかせで大変だと言う。生産者は、農業の特殊性として、あるいは、言い訳の材料として平気で口にする。自分の栽培管理、農業技術を省みず、お天気のせいにする。更に驚くことには、消費者のほとんどが、当たり前のように理解してくれることである。同情的でさえある。こうした精神構造を何とかしなければいけないと思う。つまり、同情されている産業に発展はないのである。そういう意味では、農業は、産業になり得ていないし、まだまだ、生業(なりわい)でしかない。
たとえば、輸出企業が為替で損失があっても誰も為替のせいにしないし、皆から同情もされないと言うのが普通だと思う。趣味で農作物を育てているのなら、お天気のせいにするのもいいが、プロならプロらしく、「言い訳するな。」と言いたい。リスクがあるのが当たり前、リスクを回避できなければ、経営は成り立たない。

 

農地は誰の物00/02/16
「自称、果樹王国」山梨県は、遊休農地が全国で2番目に多いそうだ。政策上では、様々な取り組みがなされてきたが、周辺を見渡すとむしろ増えてきているような気がする。市街地では、ブドウ棚が取り壊され、農地が空地になって行く様子が、農閑期のまるで風物詩のようである。山間地には、活用可能な遊休農地がたくさんあるのに、地権者の理解を得られないため整備されない。耕作を放棄しても、所有権は手放さない。先祖代々受け継いだ財産という思いが強すぎる。そもそも農地開放でもらったものなのに。やっぱり規模拡大への道のりは果てしなく遠い。

 

あせらず、ゆっくりと00/02/02
剪定作業は、やや遅れ気味だ。昨年は、2月に指を怪我して3週間休んだのにも関わらず、その割には順調に仕事ができたので、今年は、あせらず、ゆっくりと何事にも対応しようと思っている。しかし、本業以外の仕事と言うか、やらなければならない事があり、それなりに忙しい。研修旅行や、講演会などもキャンセルし時間を作っているので、なんとかなりそうだ。5月からは、めちゃ忙しくなるのでそれまでにやれるだけの事をしておこう。あせる気持ちがあるからこそ、あせらず、ゆっくりと。

 

このままでいいの?00/01/06
国内の農業が衰退してきて、一番困るのは都市住民です。農家は、自給自足レベルの食料生産に切換えるのにすぐに対応できます。我が家では、親父が野菜担当で、消費しきれないほど作っています。米も委託生産してるので不安は何もありません。農業が衰退しても、農家だけは何とか食べて行けそうです。この事実を認識していない人が多すぎます。一方で農業情勢の厳しさを嘆く人も多く、あまり儲からないのもこれまた事実のようです。ただ嘆くよりもこれからは、都市生活者に大地からのメッセージを送るべきだと思います。自給率も39%に下がってこのままでいいのですか?皆さんどうするつもりですか。まさか世界中から農産物が安定的に入ってくると思っている訳ではないでしょうね。

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