雑感のコーナー・時々コラム

2002年度の課題

目次へ

2002年度の課題序論

昨年は、農地の競売、借金、しかも2週間も早い生育の中で、息をつく暇もなく、農繁期に突入し、
おまけに予想外の猛暑、心身ともに疲れ果てた。

今までは、雇用するには、収益が少なく、厳しい状態であったが、今年からは、改植も進み、返済の据え置きもあるので、
房作り、摘粒などスポット的に雇用を入れるつもりである。

ここ数年は、減農薬にこだわり続けてきた。たった1回の農薬散布をやめるため、
結果的に、大きな負担と、不安定な栽培をしてきたように思う。
そのことの評価は、期待されたものと程遠く、コスト的にも合わないと実感した。

しかし、これまでの経験から、50%減は、守れそうなので、これからは、より美味しくを前面に出し、栽培に取り組んでゆくつもりである。
その中で、一定以上の品質を保ちながら、栽培管理を公開しながら、減農薬減化学肥料栽培を実践してゆくことになる。

2002年度の課題03/04/02
境川農場のピオーネの仕上がりの悪さに尽きる。
生育途中までは、順調であったが、収量調節の失敗と、不十分な摘心など栽培管理も徹底できなかった。

もっとも、我農場ばかりではなく、猛暑の影響で、山梨県下の標高の高い所でさえ、品質が低下した。
これは、かなり珍しいことである。

生産直売の場合、こうした事態に陥った場合、処分しなければならないブドウもあり、販売が難しい。
最盛期の9月の上旬に、通常品の注文をお断りし、発送自体も遅らせたため、
ご迷惑をおかけしたことを改めてお詫びします。

自然相手で、天候不順などの影響を受けるのは、当たり前であると多くの人が認識しているとは思いますが、
想像以上の厳しさがあります。管理不足など人災もあるし、天気予報の長期予報の外れによる対応の遅れなど、
様々な要因によりこうした結果となったことは、重ね重ね残念である。

平坦地の甲府第二農場のピオーネがまずまずの結果だったこともあり、慢心もあったと思う。

その他の農場については、おおむね良好で、収量も多かったようだ。


収量調節@03/04/14
15年ほど前、地域の先輩のSさんが、こんな話をしてくれました。
そのSさんが、若い頃、地域の先駆者で、甲斐路を作出した植原さんに、
こんな質問をしました。

「ブドウ作りで、一番難しいのは、何ですか。」

すると、植原さんは、うーんと小さく唸り、腕を組み、考え込んで、たった一言。

「やっぱり、収量調節だな。」

数ある栽培管理の中で、欲が一番働く管理が、収量調節です。
私は、これまで、収量調節で、大きな失敗は、ありませんでしたが、
昨年の境川農場での収穫時には、残念ながら、このSさんの話を思い出し、
先人の仲間入りをしてしまいました。

収量調節A03/04/16
K先輩と収量調節の失敗、結果過多の話をしたところ、
「子供が、大学に進学するとか、いつもより出費の多い年に限って、
皆、失敗しているよ。」
出費が多い年なのに、収入も減り、二重の痛手になり、その重要性に気が付くようだ。

「ディズニーランドの最大のライバルは、自らの慢心である。」と社長が話していた。
品質管理を徹底すれば、信用度は増すが、
悲しいかな個人規模のブドウ園では、生活が成り立たなくなる。
経営に体力が無ければ尚更である。
収量調節は、技術ではなく、心の問題である。

作柄の悪い年に、いつもより品質の低下したブドウをお届けしたところ、
「今年のブドウ作りは、大変でしたね。ご苦労なさったでしょう。」としみじみ話され、
翌年、いつものブドウをお届けしたところ、
「今年は、いつもの努力が実りましたね。」と笑顔で話されました。

暖かいその言葉、いつまでも忘れません。

収量調節B03/04/19
収量調節の難しさは、生育後半の気象、降雨量を予測しながら、樹や枝の強弱を
考慮し、適正収量に収めることである。

ピオーネの場合、1粒重を20g、30粒で、600gを10a、2500房で、1500Kgを
目標とした場合、1粒重で、約5gの誤差があり、収量は、
最小で1125Kg、最大で1875Kgと±750Kgの差になる。

房数が一定であってもこれだけの差が出るのだから、意識的収量増を狙った時は、
細心の注意を払わなければならないだろう。

実際には、一房重の予測も、房数の調節も非常に難しく、降雨量と樹勢により、
結果も大きく変わってしまう。
したがって、長期予報が外れ、
着色前に、収量を調節しても、「時すでに遅し」
修正が困難になる時もある。

収量調節C03/04/20
適正収量とは、何だろうか。
房数が一定であっても、一粒重の誤差だけで、収量調節が上手くいかない。
それなら、最初から、房数を少な目に管理すれば、安全そうに思われる。

これは、収量を調節することで、樹勢(樹の強弱)をコントロールするのを、放棄したことになる。
適度な樹勢を保つことは、安定的な品質と一定の収量を確保するのだが、
実止まり直後などの早めの摘房で、収量が少なすぎる場合は、新梢の徒長などの弊害が多い。
経験上最初からの軽すぎる収量調整では、適度な樹勢を維持しにくい。

ただ、実止まり後から、ベレーゾーン、着色始めまで生育を見ながらの段階的な摘房は、
弊害が少ないが、すでにカサかけ、袋かけを終えている状況では、心情的に、やりにくい。

果樹栽培、特にブドウ栽培では、約90%の剪定率であるから、整枝剪定の重要性は大きい。
樹形を固定する仕立て方では、収量による樹勢の変化への対応が、
施肥と芽欠きしかなくなるので、自由度が少なくなり、一番効果的な剪定での強弱がつけにくくなる。

収量調節D03/04/28
適正収量とは、翌年の剪定枝が十分に確保でき、品質も一定水準の中での最大収量を言う。
生育後半の樹勢、降雨量などの気象条件によっても左右される。
つまり結果により適正であったかどうか判断される。

品質も十分で、収量が予測以下の場合は、ブドウに余力があったと考えられる。
適正であれば、収量は、予測以上になるはずである。

また、単位面積あたりの収量もまた、これまでの経験則から、
導き出されたところが多いと思われる。
土壌条件、気象状況、樹勢、仕立て方により数値が変わるのは当然である。

したがって、基本収量自体が怪しいのだから、収量調節は、本当に難しい。


目次へ

感想、意見などはこちらへ
hitoshi@ikegawa.com